民間療法は信用していい?医師の立場からお話しします
本日は、「民間療法って、ちゃんとしてるの?」
という、患者さんからよく聞かれるテーマについてお話しします。
整体、鍼灸、漢方、サプリメント、◯◯体操、△△療法……
インターネットやSNSを見ると、さまざまな「体に良さそうなモノ」があふれています。
中には、
「病院では治らなかったけど、これで良くなった」
「病院でもう治せないと言われたがんが、治った。」
という体験談を目にしたことがある方も多いでしょう。
では、民間療法は本当にいいものなのでしょうか。
それとも、“怪しいもの”なのでしょうか?
結論からお話しします。
民間療法がすべて間違っている、とはいえませんが、
科学的・統計学的根拠(エビデンス)を示せていないものは、そのほとんどを「信用できない」と考えるべきでしょう。
■ 問題は「科学的に確かめられているか」
何か特定の施術を受けたり、薬を飲むことで、
・痛みを和らげる
・リラックスできる
・生活習慣を見直すきっかけになる
こうした点では、一定の効果を感じる方はいます。
実際、現代医療の中にも、かつては民間療法だったものが科学的に検証され、標準治療として取り入れられた例もあります。
しかし、私たち医師は、医療人であると同時に、科学者でもあります。
医療のベースにあるのは必ず科学的理論です。
✔︎風邪をひいてもすぐに薬局で薬を買うことができる。
✔︎感染症になっても、原因菌に合った抗生剤を使えば治せる。
✔︎ガンも、種類によってはかなり延命できる時代になった
今では当たり前のようですが、これらはすべて長年にわたる研究と検証の積み重ねによって証明されてきたものです。
我々はいつもその恩恵を当たり前のように享受しているのです。
重要なのは、
「誰がやっても、一定の効果が高い確率で期待できるか」
という点です。
医療では
・多くの人を対象に
・他の治療法ときちんと比較して
・統計的に効果があるか
厳しい検証を重ねます。
それを国が認め、保険診療として採用するまでには、莫大な時間・労力・費用がかかっています。
■ 体験談は全く「根拠」にはなりません
一方、民間療法の多くは
「この人には効いた」
「私の知り合いは良くなった」
という個人の体験談が中心です。
それを“誰にでも効く治療”として広告することは、完全に誤りです。
なぜ体験談が中心になる理由はシンプルで、
✔︎科学的検証の重要性を知らない
あるいは
✔︎検証すると効果がないことが知られてしまう
このどちらかです。
たとえばですが、
「タバコを吸う人はがんになる可能性が上がる」
これはよく知られた事実であり、タバコが多くのがんの発生率を増加させるということは、科学的・統計学的にも間違いがありません。
しかし、ヘビースモーカーの人が全員がんになるとも限りません。もし何十年もヘビースモーカーをしてきた元気な90歳の喫煙者が、
「自分はがんになっていない。だからタバコは無害だ。」
と主張したら、この言葉を信用すべきでしょうか。
多くの方は「たまたまでしょ」と思うはずです。
これが、1人の体験談では全く科学的根拠にはならない、ということです。
エビデンスというものは、多くのサンプルを解析し、適正な検証のもと、統計学的な有意差が出なくては証明が出来ません。
危惧されるのは、
民間療法に頼ることで、必要な医療が遅れてしまうことです。
特に起きやすいパターンは、「がん」です。
完治できないと宣告されたら、誰もが絶望感に打ちひしがられるでしょう。
なんとかならないか。人はどうしても「わずかな可能性」にもすがりたくなります。
悪質な民間療法はその心理を狙ってきます。
みなさんは、長年をかけて働かれて貯めてこられた大切なお金を、簡単にエビデンスのない治療につぎこんでよいのかどうか、冷静になりましょう。まずはご家族に相談されるのがよいかもしれません。
どうしても、民間療法を利用する場合は、あくまで病院での「保険診療」を前提に、うまく共存させるようにしましょう。
「病院での治療をやめてしまって、民間療法に切り替えてしまう」
これはとても危険です。エビデンスの無い高額な治療は、社会悪でもあります。
どうか冷静に、十分に調べ、
迷ったときは、やはり保険医療機関に相談してください。
では、本日も、診療に邁進いたします!