手術が早い先生=上手??それとも…?
本日は「手術の早さ」と「手術の上手さ」をテーマにお話ししてみたいと思います。
手術の「時間」について、みなさんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。
ご家族が手術を受けられ、その間、病院で心配しながら待たれたご経験のある方も多いと思います。
手術室の中の様子はほとんどの場合知るすべがないので、不安な気持ちで待たれていたのではないでしょうか。
予定より手術時間が延びたとき、「何かトラブルがあったのでは?」と心配になる方もいれば、
「時間をかけてとても丁寧に手術してくださっているのだろう」とむしろ執刀医に感謝される方もおられるかもしれません。
結論からお話しします。
多くの場合、
「手術がうまい先生ほど、手術が早い」
は成り立ちます。
手術室の設備やスタッフの熟練度も、施設ごとに差があります。手術は、執刀医ひとりで行うものではありません。そのため、手術の早さは、必ずしも執刀医ひとりだけで決まるわけではありません。
例外はいくらでもあります。
それでも総じて言えば、
手術が上手な先生ほど、手術が早い傾向があります。
外科医に必要な資質として「手先が器用であること」を思い浮かべる方は多いかもしれません。
もちろん、それも大切ですが、実際の手術でより重要なのは
「判断力」
です。
手術は、手先よりも頭を使って行う医療行為です。
人体を切開して行う以上、出血は避けられませんし、どれだけ準備をしていても予期せぬ事態が起こることがあります。
その場その場で、瞬時に正しい判断を下す必要があります。手術の上手な先生は、その判断力が優れています。
迷いが少なく、動きに無駄がなく、止血操作にすぐれ、予期せぬ事態への対応も的確です。
結果として、判断ミスが少なく、さらなるトラブルを回避でき、合併症も減らせます。
こうした力を身につけるには、一定の執刀経験、いわゆる「修羅場をくぐった数」が必要です。ただ、最終的にはどうしても「手術のセンス」が大きく問われる部分です。
私自身、医師になる前は、
「手術がうまい人 = 手先がとても器用な人」
というイメージを持っていました。
極端な話、手先が特別に器用な小学生が、知識が十分な医者の指導を受ければ手術操作ができるのでは、と。
しかし、実際には全く間違いであることを知ります。
「手術は、手ではなく頭(脳)でするもの」であると。
私は多くの後輩外科医と仕事をさせてもらい、教育にも携わってきました。
その際、「手術は手先ではなく頭でするもの」「手術の最優先は、止血である。」
と伝えるようにしていました。
同じように教えても、すぐに上達する人と、時間がかかる人がいます。残酷ですが資質の違いはどの世界にも存在するものです。
特にスジのいい後輩を指導していると、「この先生はいずれ自分より優れた外科医になれる」と感じることもあります。
この点は、スポーツにも似ています。長く続けていてもなかなか上達しない人がいる一方で、飲み込みが早く短期間で伸びる人もいるわけです。
結論です。
手術が上手な先生は、判断が的確で迷いが少なく、トラブルが少なく、結果として手術時間が短くなることが多い
です。
習熟すれば、手術時間が短くなるだけでなく、傷は小さく、出血は少なく、手術の質も高くなります。
当然ですね。迷いなく手術を進められているので、余計な操作もなく患者さんのダメージも少なくなりますから。
手術は早さを競うものではありませんが、ご家族をお待たせする時間を短くできますし、何より、手術時間が短く出血量が少ないほど感染症や肺炎などの術後合併症が減ることが医学的にも証明されています。
とはいっても、みなさんに手術が必要になったとき、
「どの外科医を選ぶべきか」
その判断はとても難しいです。この場で一言で述べることはできません。
また機会があれば、外科医という世界について、お話しできればと思います。
それでは、今日も医療に邁進いたします!