片頭痛とは

片頭痛は、頭の片側(場合によっては両側)がズキズキと脈打つように痛む頭痛で、日常生活に支障が出るほどの強い痛みを伴うことが多い疾患です。頭痛発作のたびに仕事や家事を休まざるを得ないという方も少なくありません。
日本国内でも多くの方が悩んでいる一般的な病気ですが、「頭痛くらい市販薬で我慢すればよい」と受診を先延ばしにしてしまう方もいらっしゃいます。片頭痛は適切な診断と治療によって症状をコントロールできる疾患ですので、繰り返す頭痛でお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。
片頭痛は単なる「ひどい頭痛」ではなく、脳の神経が過敏になることや、神経から放出されるCGRPと呼ばれる炎症性物質などが関与して起こる疾患です。遺伝的な素因があることも知られており、家族に片頭痛持ちの方がいる場合は発症リスクが高まるとされています。
片頭痛の主な症状
脈打つような痛み
頭の片側がドクドクと響くように痛み、動くとさらに強く感じることがあります。吐き気や嘔吐
頭痛と同時に気分が悪くなり、実際に吐いてしまう方もいます。光や音に敏感になる
明るい光や大きな音がつらく感じ、静かな場所で過ごしたくなることがあります。前兆が現れることがある
ギザギザした光が見える、視野の一部が欠けるなどの症状が頭痛の前に出る場合があります。発作が長く続くことがある
数時間で治まることもあれば、数日にわたって続くケースもあります。頭痛の前に起こる変化
あくびが増える、食欲が変わる、なんとなく気分がすぐれないなど、頭痛の前触れを感じる方もいます。片頭痛の治療法
片頭痛の治療は、大きく分けて
① 発作が起きたときに痛みを抑える「急性期治療(頓挫療法)」
② 発作そのものを起こりにくくする「予防療法」
の2つがあり、これらをうまく組み合わせることが大切です。
片頭痛の頻度や痛みの強さ、仕事・家事・学校生活への影響などを考慮しながら、それぞれの方に合った治療を選択する必要があります。
また、睡眠不足や不規則な生活、ストレス、空腹などが片頭痛の誘因になることもあるため、生活習慣を整えることも大切です。
片頭痛専用のお薬一覧
| 薬剤名 | 使用目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| スマトリプタンなどのトリプタン系薬剤 | 発作時 | 片頭痛発作時に使用する代表的な治療薬です。発作の比較的早い段階で使用することが重要です。 |
| レイボー®(ラスミジタン) | 発作時 | トリプタンとは異なる作用機序をもつ急性期治療薬です。トリプタンで十分な効果が得られない場合などにも選択肢となります。 |
| ナルティーク®(リメゲパント) | 発作時・予防 | CGRP受容体を抑えるゲパント系薬剤です。発作時の治療と予防治療の両方に使用できることが特徴です。 |
| アクイプタ®(アトゲパント) | 予防 | CGRP受容体を抑えるゲパント系薬剤です。1日1回の内服で片頭痛発作を起こりにくくする予防薬です。 |
| エムガルティ®(ガルカネズマブ) | 予防 | CGRPを標的とした抗体製剤です。初回投与後は月1回の注射で、片頭痛発作を起こりにくくします。 |
| アジョビ®(フレマネズマブ) | 予防 | CGRPを標的とした抗体製剤です。4週間に1回または12週間に1回の投与方法があります。 |
発作が起きたときの治療 ― 急性期治療
片頭痛発作が起こった際には、できるだけ早い段階で痛みを抑える治療を行います。
軽い発作であれば一般的な鎮痛薬が有効なこともありますし、それで治まる場合は特別な治療は必要ありません。しかし、痛みが強い場合や一般的な鎮痛薬では十分な効果が得られない場合には、片頭痛専用の治療薬が必要なことがあります。
トリプタン系薬剤
代表的な薬剤としてスマトリプタン(イミグラン®)、リザトリプタン(マクサルト®)などがあります。
トリプタンは、片頭痛の発作に関係するセロトニン受容体に作用し、三叉神経からの炎症性物質の放出などを抑えることで、頭痛や吐き気などの症状を改善します。
片頭痛が強くなってからでは効きにくいことがあるため、服用するタイミングが重要です。頭痛が始まり、まだ痛みが軽い段階で早めに服用することがうまく痛みを抑えるコツになります。
患者さんによって効きやすいトリプタンが異なることもあり、症状やこれまでの治療歴などをみながら薬剤を選択します。
レイボー®(ラスミジタン)
トリプタンとは異なる仕組みで作用する片頭痛発作の急性期治療薬です。
セロトニン5-HT1F受容体に選択的に作用し、片頭痛に関係する三叉神経系の過剰な活動や痛みの伝達を抑えます。
トリプタンとは作用する受容体が異なるため、トリプタンで十分な効果が得られなかった方などで治療の選択肢となることがあります。
一方で、眠気やめまいなどがみられる場合があるため、服用後の自動車運転などについて注意が必要です。
発作を減らすための「予防療法」
片頭痛発作が頻繁に起こる場合や、1回の発作が強く日常生活への影響が大きい場合には、発作時の治療だけではなく予防療法を検討します。
一般的には、
- 片頭痛発作が月に何度も起こる
- 急性期治療薬を頻繁に使用している
- 頭痛のために仕事や家事、学校生活に支障がある
- 発作が長時間続く
- 急性期治療だけでは十分にコントロールできない
といった場合に予防治療を検討します。
ミグシス®(ロメリジン)など従来から使用されている内服薬に加え、現在はCGRPを標的とした注射薬や飲み薬も使用できるようになっています。
CGRPを標的とした片頭痛予防の注射薬
片頭痛発作では、三叉神経から放出されるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド:片頭痛の発症に深く関わる神経ペプチド)が痛みの発生に重要な役割を果たしていることが分かっています。このCGRPの働きを抑えることで片頭痛発作を減らすのが、抗CGRP抗体製剤です。
当院では、以下のような治療薬をご提案しています。
エムガルティ®(ガルカネズマブ)
エムガルティ®は、CGRPそのものに結合してその働きを抑える注射薬です。
初回は240mg(2本)を皮下注射し、その後は1か月に1回、120mg(1本)を投与します。
毎日の内服が必要ないことも特徴のひとつで、従来の予防薬で十分な効果が得られなかった方などにも使用されます。
アジョビ®(フレマネズマブ)
アジョビ®もCGRPの働きを抑える片頭痛予防の注射薬です。
投与方法には、
・4週間に1回、225mg(1本)を打つ
または
・12週間に1回、675mg(3本)を打つ
という選択肢があります。
生活スタイルなどに合わせて、投与間隔を選択できることが特徴です。
当院では自己注射の指導にも対応しています
CGRP関連の注射薬の中には、治療の効果を確認後、適切な指導を受けたうえで、ご自宅で自己注射できる薬剤があります。
当院では、治療導入時に医師が適応を判断し、必要に応じて院内で注射方法についてご説明・指導を行います。
「自分で注射するのが不安」という方にも、実際の器具の使い方や注射する場所、保管方法などを確認しながらご説明しますので、ご相談ください。
新しい片頭痛治療薬「ゲパント」
最近、飲み薬としてCGRP受容体の働きを抑える薬が登場しました。これらを「ゲパント系薬剤」と呼びます。
従来のトリプタンとは異なる作用機序を持つ、新しい片頭痛治療の選択肢です。
ナルティーク®(リメゲパント)
ナルティーク®は、CGRP受容体をブロックするゲパント系薬剤です。
大きな特徴は、
・片頭痛発作が起きたときの急性期治療
・片頭痛発作を起こりにくくする予防治療
の両方の目的に使用できることです。
発作時には1回75mgを使用し、予防目的では75mgを隔日で服用します。
「発作のときだけ薬を使いたい」という方だけでなく、発作の回数そのものを減らしたい方にとっても、新しい治療選択肢となっています。
アクイプタ®(アトゲパント)
アクイプタ®もCGRP受容体を標的とするゲパント系の飲み薬です。
アクイプタは主に片頭痛の予防治療に使用され、通常は1日1回服用します。
従来の片頭痛予防薬とは異なり、片頭痛に関係するCGRPの働きを直接抑えることを目的とした薬剤です。
発作の回数が多い方や、頭痛によって仕事や日常生活に大きな支障がある方などで使用を検討します。
鎮痛薬の使いすぎにも注意が必要です
片頭痛では、頭痛がつらいために鎮痛薬を何度も使用しているうちに、かえって頭痛が慢性化してしまうことがあります。これは「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」と呼ばれます。
「頭痛薬を飲む日が増えてきた」
「以前より薬が効きにくくなった」
「月の半分近く頭痛がある」
といった場合には、薬を変更するだけではなく、片頭痛そのものに対する予防治療が必要なことがあります。
一人ひとりに合わせて治療を選択します
片頭痛の治療薬は近年大きく進歩し、従来の鎮痛薬やトリプタンだけでなく、
レイボー®、ナルティーク®、アクイプタ®、エムガルティ®、アジョビ®など、さまざまな治療選択肢があります。
どの薬が最も適しているかは、頭痛の回数や強さだけでなく、年齢、持病、生活スタイル、これまで使用した薬の効果などによって異なります。
愛知県稲沢市にあるミライエ脳神経クリニックでは、脳神経外科専門医が頭痛の状態を詳しく確認し、必要に応じてMRIなどによる検査を行ったうえで適切な治療をご提案しています。
片頭痛の予防と生活習慣

日常生活でできる片頭痛の予防法
薬による治療と並んで、日々の過ごし方を整えることが発作の予防に直結します。
片頭痛は睡眠・食事・気圧・ホルモンバランスなど、さまざまな要因が引き金になることが知られており、自分なりの「トリガー(誘発因子)」を把握することが重要です。
睡眠は毎日なるべく同じ時間に就寝・起床することが基本で、休日の「寝だめ」も発作を誘発することがあるため注意が必要です。
食事は欠食を避け、チーズ・赤ワイン・チョコレートなど発作を起こしやすいと感じる食品を自分なりに把握しておくとよいでしょう。また、水分をこまめに摂って脱水を防ぐことも大切で、夏場は特に意識したい習慣です。
頭痛日記をつけて発作の日時・持続時間・誘発要因を記録しておくと、受診時の診断に役立つだけでなく、自分のパターンを客観的に把握する助けにもなります。
ストレス管理と片頭痛の関係
ストレスは片頭痛の最もよく知られた誘発因子のひとつです。
緊張状態が長く続いたあと、ホッと緩んだタイミングで発作が起きる「週末頭痛」もこれに当たります。
ストレスを完全になくすことは難しいですが、ウォーキングや軽いストレッチ、腹式呼吸など、自分に合ったリラクゼーションの習慣を持つことが助けになります。また、極端に長時間のパソコン作業や、首・肩への過度な負担も頭痛を悪化させる要因となるため、仕事中の姿勢や休憩の取り方を見直してみることも有効です。
片頭痛に関するよくある質問

- Q.片頭痛と緊張型頭痛の違いは何ですか?
- A.緊張型頭痛は頭全体を締め付けられるような鈍い痛みが特徴で、日常動作で悪化することは少なく、吐き気を伴うことも多くありません。一方、片頭痛はズキズキとした拍動性の痛みで、動作によって痛みが強まり、吐き気や光・音への過敏を伴うことが多い点が異なります。ただし両方が混在する方もいるため、気になる場合は受診して正確に判断することをお勧めします。
- Q.市販の頭痛薬を飲んでいるのですが、効かなくなってきました。
- A.市販の鎮痛薬を週に何度も使うようになると、薬が効きにくくなる「薬物乱用頭痛」に移行することがあります。また、片頭痛にはトリプタン系薬剤など専用の治療薬があり、適切な薬に切り替えることで発作を短時間で抑えられる場合があります。自己判断で対処し続けるのではなく、一度当院にご相談ください。
- Q.妊娠中でも片頭痛の薬を飲んでいいですか?
- A.妊娠中は使用できる薬が限られます。トリプタン系薬剤や一部の鎮痛薬は妊娠中の使用を避けるべきものもあるため、自己判断で市販薬を継続するのは控えてください。妊娠中に片頭痛がある場合は、産婦人科と連携しながら安全に対応できる方法を一緒に考えますので、お気軽にご相談ください。
- Q.子どもにも片頭痛はありますか?
- A.はい、片頭痛は子どもにも起こります。小児の片頭痛は両側性の痛みが多く、発作の持続時間が短い傾向があります。繰り返し学校を休むほどの頭痛がある場合は、一度受診してみてください。